サマータイム
2020年の東京オリンピックに向けてサマータイム制の導入が取り沙汰されたりしましたが、わたしはサマータイムと聞くと、ジャズのスタンダード・ナンバーの「サマータイム」を思い出します。1935年にジョージ・ガーシュインがオペラ「ポーギーとベス」のために作曲して以来、数多くのミュージシャンによりカバーされてきたこの曲。マイルス・デイヴィスはアルバム「Porgy&Bess」の中で、ギル・エヴァンスのオーケストレーションとともにトランペットで演奏していますね。テナーサックスのジョン・コルトレーンは有名なアルバム「My Favorite Things」のB面にサマータイムのアグレッシブな演奏を収録しています。
1966年7月にコルトレーンは最初で最後の来日公演のツアーを行いました。彼の死の前年の夏です。コンサートは東京・大阪・名古屋・福岡などの都市のほか、広島・長崎でも開催されました。このツアーにあたって新曲「Peace On Earth」(地球の平和)を用意したことからも彼が被爆地の広島・長崎訪問に対して深い思い入れを持っていたのではないかと言われています。長崎の浦上天主堂跡の爆心地にある長崎平和公園で献花をしたコルトレーンは、長崎公演のラストに「サマータイム」を演奏したのだそうです。
今年の夏も終わりますが、コルトレーンの来日公演を実体験した人たちにとっては、夏の暑い日が喚起する戦争の記憶とこのときのコンサートが、どこかで結びついているのではないだろうかと想像します。(さかもと)